2012年4月13日金曜日

ワイルドライフ ニュース: アフリカゾウ


2011年3月21日
Nairobi Star(ナイロビ)(取材・文/Kibiwott Koross)

翻訳協力:安藤香生留  校正協力:中野治子

The Kenya Wildlife Service(KWS ケニア野生生物公社)は国内に生息している野生生物を管理保全し、関連法規を施行する目的で設置された行政機関である。このたびスター新聞のKibiwott Koross記者がケニア野生生物公社総裁であるJulius Kipng'etich博士にインタビューし、ケニア野生生物公社の将来的展望や課題、野生生物保護に関するさまざまな取り組みと現職退任後の博士の予定について話を聞いた。

― 昨年の12月に大統領によって現職の任期を3年間延長されたようですが、今期はどのような展望をお持ちですか。

焦点を当てるべき分野が4つあります。まずは装備(武器)の近代化に着手します。すなわち、最新式の軍事装備を準備したいと考えています。密猟者たちが使用する武器は高性能化が進んでいます。この課題の取り組みとして私たちも最新式の設備を導入すべきであり、とくに各空港においてその必要性が高いと思われます。

2つめはインフラの整備です。野生生物は国の観光資源の基盤です。観光客には整備された道路を供給する必要があります。国立公園にあるすべての道路で改修工事が実施できるように、現在働きかけを行っています。

3つめは科学技術の向上です。私たちは野生生物研究の過渡期におり、研究機関に独立性を持たせたいと考えています。今後3年間で2か所の研究所を増やす予定です。そのうちの1か所では、野生生物に関する犯罪を証拠立てる科学捜査と、とくに動物の分布や、とりわけ繁殖に関して役に立つ遺伝学の研究を行う予定です。

4つめは今後1年での顧客サービスの改善です。現在7月の利用開始に向けて、サファリカードを準備しています。さらに、訪れる観光客が最高の満足を得られるようツアーオペレーターに協力を呼びかけています。ナイトサファリや、ウォーキングサファリ、さらには気球に乗ってサファリ内を周遊するバルーンサファリの認可を増やすなどの付加価値サービスを導入する予定です。

― これまでのケニア野生生物公社での任期で、どのような成果を得られたと思われますか?

数年前、私が入る前のケニア野生生物公社では、公社の総収入の48%を盗まれていました。我々の見積もりでは10億シリング(約10億円)も。しかもそのほとんどがゲートで、です。

私たちは効率的な監督体制にして問題解決に乗り出しました。過去のケニア野生生物公社では目指すべきビジョンがなく、監督体制の連絡が良くなかったのです。この点の改善は成功したように思います。また、スタッフ間のモラル意識も大変低く、私が給与のバランスを調整し給料制度を確立すると、入園ゲートでの盗難は減りました。

― 国内で象牙取引が禁止されてから今年で22年になります。その後、少なくとも全体の5パーセントに当たる多くのゾウは、自然死や老衰が原因で命を落としていると考えられています。禁止法施行後の象牙の在庫量はどれくらいあるのでしょうか。

象牙の在庫量は65トンで、安全にかつ厳重に保管されています。

― ケニアではトロフィーハンティングが禁止されています。なぜいまだに押収された象牙が大量にあるのでしょうか。

象牙の大半は、国立公園で老衰や自然死が原因で死亡したゾウから採取されたものです。

― それは野生生物や、その中でもとくにゾウが、密猟によって数多く死亡しているということでしょうか。


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密猟によるケースがあるのは事実ですが、ゾウの大部分は、そうでうすね、99パーセントに当たるゾウは自然死が原因で死亡しているといえるでしょう。私たちは政府の安全保障機構と連携する反密猟チームを編成しています。

在庫の象牙のほとんどは空港で押収したものです。つまりトランジット(飛行機の乗り換え)の際に押収したもので、これらの大部分はコンゴや南アフリカから運ばれています。
ジョモ・ケニアッタ国際空港はアフリカにある3カ所の国際空港のうちの1つであるということからも、このような検査は実施されるべきです。3カ所の空港のうち、残りの2カ所はヨハネスブルグとアディスアベバにあります。象牙の密輸先としてはおもに日本と最多消費国である中国あげられます。
いまも言いましたが、アフリカに中国人の数が増えているので(押収件数も)増えていると申し上げたいのです。
もう一度言いますが、この国のゾウの個体数は増えていると指摘しておかなければなりません。 現時点では37,000頭のゾウがおり、1989年には16,000頭のみであったことに比べると、個体数は1年あたり4パーセントの増加率を示しています。

全体的に考えると、ゾウが30歳で死亡することを考慮しても、密猟はそれほどおおげさなものではありません。

― 今後、放牧を中心とする私有地や保護地区が増えていく理由について聞かせてください。

私たちが向き合わなければならない課題が1つあります。動物の生息数は増えているのに、生息域は日ごとに減っています。個人経営の放牧場や公共牧場がその代りの場所になりつつあります。ですからこれについては問題ありません。私たちはその動きを注意深く見守っています。

― その中に密猟者がいるのではないかと言われているようですが、ケニア野生生物公社が密猟行為を犯した牧場経営者を逮捕した前例はありますか?

そのような事例はあったかもしれませんが、逮捕者は出ていません。私は真相を明らかにして、密猟者を報告するよう全員に働きかけています。そのうえ、警察と連携する独自の情報機関を設けています。本当に密猟者がいるとしても、長続きはしないでしょう。

― 押収された狩猟トロフィーが闇市場に流れているという疑惑があります。本当でしょうか。

先ほどもお伝えしたように、私たちが押収した象牙はすべて厳重に保管されています。在庫を横流しする職員については、事実ではありません。しかし、証拠をつかんでいる人があるなら、我々に申し出てくれれば歓迎します。

― The Aberdare National Park(アバーディア国立公園)内に生息するサイの数が、この5年間で大幅に減少しているという報告があります。本当ですか。

はい。アバーディアでは問題が起きています。公園内でサイがライオンに食べられてしまい、個体数が増えませんでした。そのためライオンは他の公園に移動させました。

― アバーディアは比較的小さな公園で、Tsavo(ツァボ)国立公園ほど管理が難しくないはずですが、なぜこのようなことが起きたのでしょうか。

サイの減少は密猟ではなく、ライオンに食べられてしまったことが原因です。個体数の減少に対し、予測ほど増加しなかったことから、繁殖に問題があったと思われます。現在ツァボでは8頭のサイが生息しています。

― ツァボではどうでしょうか。多くのゾウが死亡している事例がありますが、なぜでしょうか。

干ばつの間にツァボでは多くのゾウが命を落としました。ゾウが乾季に成長したある種の有毒植物を食べてしまったためです。しかし、最近生息数調査をおこないました。ツァボでのゾウの個体数は予想より高くなりそうだと申し上げたい。


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― 現職に就任されてから、ケニア野生生物庁公社が起訴した密猟者は何名いるのでしょうか。

たしかにかつては全国で多数の密猟者が逮捕されましたが、国立公園周辺住民のコミュニティーもゾウ保護に協力するようになってからは、密猟はなくなりました。

― 一般的に密猟に科せられる刑罰はどのようなものでしょうか。もっと厳重な刑罰を与えるべきだと思われますか?

この件には重要な課題があります。裁判官はこういった事例を軽犯罪として扱います。罰金が軽すぎますが、問題は裁判官ではなく法律にあるのです。通常の罰金は約2,000ケニア・シリング(約2,000円)で、密猟者に適当ではない金額が徴収されます。10トンの象牙の所持が発覚した場合は、20,000ケニア・シリング (約20,000円)が科せられますが、ブローカーたちにとっては少額すぎるのです。

しかしながら、現在実施されている法律は時代にあっていません。the Wildlife Bill(今審議されている野生生物保護法改正案)が通り次第、密猟に対する刑罰は厳重になり、状況は変わるでしょう。

― 野生生物問題に経験のある治安判事が出席し、このような事例を取り扱うWildlife Court(野生生物裁判所)必要だと思われますか?

はい。Wildlife Billでは、密猟は経済犯罪であると定めています。野生生物の専門家は検察官の役割を果たすでしょうし、私たちは専門の弁護士を採用することになると思います。

― Wildlife Act(野生生物保護法)では、裁判所はケニア野生生物公社に対して有罪判決を下したすべての密猟者の記録を送付するように定めています。これは実施されているのでしょうか。

そうですね、裁判所から記録を受け取ることはありませんが、公社内で独自の記録を保管しています。

― 1900年から1967年ごろまで、the Game Department (狩猟庁)とNational Parks(ケニア国立公園庁)が年間報告書を作成し、これらの保護局の活動内容が公開されていました。なぜ現在は実施されていないのでしょうか。
  (訳注 狩猟庁とケニア国立公園庁は1976年まで存在した役所)

野生生物公社で報告書を作成しています。こちらにコピーがありますのでご確認ください。この報告書は国内すべての国立公園と保護地区についての年次情報を掲載しています。

― すべてとはいえないにしてもほとんどの場合、地方自治体がGame Reserves(鳥獣保護区)を管理しています。地方自治体は記録管理が甘く、狩猟管理は外部に委託したほうが妥当だと思われます。こういった現状が密猟を規制できない原因なのでしょうか。

ここしばらくの間に、国立公園内で発生する密猟は大幅に減少しています。国立公園や保護地区の付近に住む地域コミュニティーを野生生物保護に参加させることができたのです。これには大きな成果があったと思います。

― 近年の調査によると、密猟の最大の動機は肉だということがわかっています。狩猟で捕獲された肉が売りに出される事態が横行している問題を対処するために、どのような計画が導入されるのでしょうか。
  (訳注 ケニアでは1977年に狩猟が全面禁止となり、現在は一部許可制となっている)

太古の時代から、ケニアの人々は狩猟で捕獲した肉を好んで食べます。国立公園と保護地区周辺のほとんどの地域コミュニティーの人々はハンターであったため、肉に依存する習性があることを念頭に置いておかなければなりません。私たちはこのような地域コミュニティーの指導にあたっており、先ほども述べたように、今その努力が実を結んでいるところです。国立公園付近の地域コミュニティーもまた野生生物から大きな恩恵を受けているのです。


メナヘム開始し、抑うつ

― ケニア野生生物公社は、上流階級層のほかに地域コミュニティーが狩猟で捕獲した肉で利益を得られるよう保証するために、現在の計画の焦点を見直すのでしょうか。
少数の特権階級の客層は、肉中心のメニューを出すレストランなどで狩猟によって捕獲された肉を食べています。

New Wildlife Bill(今審議されている野生生物保護法改正案)では、厳重な監視下のもとで、役に立たなくなった動物を間引いて処分することを認めています。1990年に政府はバッファローなどの個体数を減らすためという口実で狩猟を認めました。しかしこれは、一般市民を締め出して大手ホテルや退職者に狩猟を許可したことで結果的に、プロの密猟者にとっての追い風になっただけでした。こういうことはもう繰り返されないでしょう。

― ケニアでは所有している土地に野生生物が生息している場合、土地所有者に所有権や利用権は与えられていないにもかかわらず、野生生物を保護飼育する費用は負担せざるを得ません。ところが、アフリカの各地、とくに南アフリカでは、土地所有者は敷地内に生息する野生生物が持つ潜在的経済力を十分に換金できます。ゆえに、南アフリカでは野生生物の個体数がきわめて上昇しており、一方ケニアでは減少しています。なぜケニアでは野生生物公社がいまだにこのような取り組み方をしているのでしょうか。

それは違います。ケニア野生生物公社にはケニア国民からいかなる土地を取り上げる権利もなく、実際に没収も行っていません。私たちが行ってきた仕事は、広大な土地の所有者たちとより密接な関係を築き協力して活動を行うことです。このような活動で多くの土地が共有権で管理され、個人所有の土地は保護区に転換されています。

また、先ほども触れたように、国内のゾウの個体数は4パーセントほど増加しています。南アフリカのサイの個体数をみると、ケニアとは逆にその数は減少しています。

たとえば昨年、南アフリカでは340頭のサイが死亡しました。また、この2か月で71頭のサイが死んだという報告があります。南アフリカとケニアの違いについてご理解いただけましたでしょうか。

国内には私有の放牧地や保護地区が数多くあります。その所有者のほとんどは地域コミュニティーの人々ではなく、民間人たちなのです。

― Kitengela plains(キテンゲラ高原)にあった野生動物の移動に使う回廊(コリドー)地帯に、人が定住するようになってしまったことがわかっています。公園内の野生生物に与える影響はどういったものでしょうか。これをとり戻す計画はあるのでしょうか。

忘れてはいけないのが、その、いわゆる回廊は個人所有の土地にあるということです。近年ナイロビでは人口が増加し、キテンゲラ高原に人が定住するようになりました。これはthe Nairobi National Park(ナイロビ国立公園)の野生生物にとても大きなマイナスの影響を及ぼしています。この問題はかなり以前に発生しました。国が土地政策を怠ったため、国民はそれぞれ自分の思いのままに土地を利用したことがキテンゲラの現状です。

人々の定住が過熱したのは1990年で、政府がMombasa Road(モンバサ ロード)にExport Processing Zone(EPZ 輸出用加工業特区)を導入した年でした。その土地を買い戻す以外、野生動物の"回廊"を保護する方法はありませんでしたが、多くの人々が土地の開発を進めた結果、土地価格が高騰し土地を購入することはできませんでした。

― ケニアは、観光産業で得られるかもしれない歳入をどのくらい損しているとお考えですか。


ケニアの観光産業は、野生生物だけではなくほかの自然的要因による将来性が大いに期待できます。昨年ケニアに訪れた観光客は120万人です。しかしこれは私たちが開発できる観光産業のうちのわずか5パーセントに留まっています。私たちはより多くの観光市場を開発できるように、どんどんアイデアを出していかなければなりません。世界全体でみた昨年の観光客数は約9億3,500万人で、野生生物がいないモロッコのような国でさえ1,000万人の観光客が訪れた一方で、ケニアを訪れた観光客はたった120万人でした。
これにより私たちは多くの観光客を逃していることがわかります。

― 国内にあるすべての国立保護地区と国立公園は管理計画Management Plansに同意しているのでしょうか。

ケニア野生生物公社の下にあるすべての国立保護地区と国立公園は、計画に同意しています。ケニア野生生物公社でも全国の管理計画を策定しています。この計画はすべての国立保護地区と国立公園にそれぞれ提供されています。

しかし、マサイマラのように地方自治体の管理下にあるところもあって、そういうところは計画をもっていません。
― the Masai Mara National Reserve(マサイマラ国立保護区)内で、2010年と2011年にThe Narok County Council and the Transmara County Council(ナロク県議会とトランスマラ県議会)が新しく建設を認可した観光ロッジはどのくらいあるのでしょうか。

これについては誤解があります。The Mara National Reserve(マーラ国立保護区)はケニア野生生物庁公社の管理下にはありません。自治省の監督下にある2つの県議会がこの保護地区を管理しています。

マーラに新しく何軒のホテルが建設されるのかは把握していませんが、野生生物の保護に関する限りでは、事前に検討しなければならないさまざまな多くの事柄を考慮にいれずにホテル開発を進めてしまった点などをみても、マーラの問題は深刻です。

本当にケニア野生生物公社はマーラの開発計画について把握しておりませんが、深刻な非常事態が迫っていると認識しています。

この件について私たちはナロック県議会と交渉を重ねてきましたが、いまだ何も実施されていません。計画を十分に検討しなければ、マーラを荒廃させてしまうでしょう。

― 次期Inspector General(警察庁長官)の候補に博士の名前がありました。もしオファーがあったら役職を引き受けられますか?

私も新聞で読みました。どのような情報があったのかはわかりませんが、私はできるだけケニアの国民に貢献したいと思っており、警察組織に興味はありません。私が警察官になるなど想像できません。

警察庁長官の職は、法律で公職者の公募で決めることになりましたから、指名ということはありません。私自身は応募しないし、したくもありません。

― 来年(2012年)もしくは近い将来に、政党の議席を目指す予定はありますか。

私は政治に対する意欲をもったことは一度もありません。政治は私の苦手分野なのです。

MSNマネー 2011/04/17 19:25JST/1sh=JPY0.99200

原文  
JWCSのHP 



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