1.目的
金属材料( SS-400材)を用いて,引張試験を行うことによつて,引張試験の方法を習得し,応力ーひずみ曲線,材料の機械的性質を理解することを目的とする。
2.原理
引張試験は,材料の強度を測定する最も基本的な試験である。試験は,材料に一定の伸びを試験片に与えたとき,どの程度の大きさの抵抗力を示すかを連続的に伸びを与えて調べるものである。
* 引張試験機
試験機は油圧によって試験片に伸びを与えるものと電動モーターによって与えるものに大別できる。油圧式は大荷重の容量(数千トン)のものまであり,建築,土木材料の性能試験,実物大の部材,部品試験に使用される。通常の鋼材検査証明書等の機械的性質はこの試験機を使用して求める。
本実験では,後者のネジ式引張試験機(インストロン社が最初に製造したことからインストロンタイプとも言う。)を用いる。図1は試験機のシステムを示したものである。クロスヘッド上部に荷重検出器(ロード・セル)を固定し,さらにこれに試験片掴み具(チャック)を連結し試験片の上部を固定する。一方,試験片の下部は掴み具で掴み,これを剛体枠下部に固定する。クロスヘッドは,モーターで、両側のフレームにあるネジ棹(さお)を回転させることによって上下し,試験片は一定の速度で引き伸ばされる。この試験機の特徴は一定の変位速度で負荷することができ,変位速度の設定範囲が大きい(0.005 〜500 mm/min)ので,強度の低い材料から高い材料の試験をすることができる(伸びが小さくとも精度良く負荷できる)。試験機の容量(試験で負荷できる最大荷重、約30トン以下)は油圧式ほど大きくない。材料の強さは、変位速度の影響を受けるが、ネジ式引張試験機は、荷重が変化しても常に一定速度で伸びを負荷できるので変位速度の影響を考えなくとも良い。
荷重−伸び関係曲線から応力−ひずみ曲線,設計の基礎となる種々の機械的性質が得られ,材料の引張に対する力学的特性が理解できる。
3.実験装置,器具
容量10トンネジ式引張試験機,マイクロメータ,ディジタルハイトゲージ,定盤等.
4.実験方法
4-1. 試験前の準備,測定
本実験で使用する材料はSS-400(SSはStructure Steel、構造用鋼の略,引張強さ400 MPa以上,旧JIS SS-41,引張強さ41kgf/mm2 以上)で,試験片の形状,寸法を図2に示す。
(b)
図2 引張試験片の形状,寸法
(1).試験片直径doの測定
O1近傍の直径をマイクロメータで2方向から測定する。O,O2についても同様に測定し,計6つのデータの平均値をDoとする。O1, O2の測定の際はアールの部分にかからないように注意のこと。
(2).標点のけがき
平行部の一部に(けがき線を引く近傍)けがき用塗料を塗り,試験片取り付け装置に垂直に固定し、平行部の中心位置Oをディジタルハイトゲージによって求め,この位置から上下(40)mmの位置O1,O2 にけがき線をけがく。従って,標線間距離(GL, Gage Length, 標点間距離とも言う)O1O2はGL=Lo=(80.00)mm である。このGLがひずみを計算する場合の変形前の元の長さになり、この長さがΔLの伸びを生ずるとしてひずみの計算をする。
4-2.引張試験
引張試験は,下記の要領で行うが試験機の操作は取扱説明書を予め良く読み,指示に従いながら慎重に行うこと。
(1).試験条件の設定(図1で示した試験機の場合の設定値)
・試験機荷重レンジフルスケール ( 10 ) tonf
・負荷速度 ( 10 ) mm/min
・記録計Y軸のフルスケール ( 10000 ) kgf
・記録計X軸の記録紙送り倍率 伸びの( 10 ) 倍
*赤文字は学生が説明を聞いてテキストに記入。最初は空白になっている。
(2).試験中観察すべきこと
・降伏現象,試験片表面の反射の変化,くびれの開始時期と荷重−伸び曲線との関係
4-3.破断後の測定,観察
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