当事者たちは、そんな外からの言葉で状況を把握はしていないはずで、その世代が抱える"漠然とした不安"を、著者は、軽いノリのフィクションで写し出す。世情を冷笑するギャグも見所だ。

最終的に、学歴も収入もない登場人物たちは、自力でなんとかやっていく術を探し当てていく。

陽気なバブルなんて知らない世代が、不況下をポジティブに過ごしていくための"何か"。それが、ここには描かれているのではないだろうか。

三島賞で話題作だった「こちらあみ子」よりもすごい! と友達に薦められて、まずこの新刊を手に取った。

驚いた。ライトな文体ですらすら読めるのに、普通のエンタメ小説とは違う。ヘタな純文学よりもよっぽど文学してる。

既にある小説技法の方法論のなかで、実験的なことをしているが、それが無責任のままになっていない。

これはおすすめです。純粋にたくさんの人に読んで欲しいと思った本は久しぶりかもしれない。

レビュー対象商品: ニコニコ時給８００円 (単行本)

下流の悲惨な話かな……と思ったのですが、まったくそんなことはなくて、本当に「あるある！」という感じで、自分や友達の生活をみているような気になりました。
私は漫画喫茶と2話目の某ファッションビルでバイトしたことがあるのですが、取材した現場をそのまま書いてあるわけではなく、おもしろそうなところがうまくチョイスされています。

他の職場についても、それぞれの現場が詳しく書いてあって、「わたしも働けるかも……」と思わされました。
最後、五話目のリュウセイがステキで、自分がどうして働こうとしているか、働きたいのか、という悩みがぱーっと晴れるような気がしました。